5d116f7f.jpg母が私に日本の浮世絵の図譜を小学生の頃、まとめて購入してきた。
何しろその図譜は代表的江戸の版画師のほぼ主要作品が収められており
更にその版画版も何点か入っており
少年だった僕の心をいっきに虜にした。
毎日毎日のようにランドセルを放り投げて帰宅後、夕食後ながめたものだ。
(大学生の頃はその中でこの代表的な北斎の波の絵をそーと抜いてアパートに飾っていて母に見つかり叱られたのも記憶に新しい。)
特に広重と北斎のその構図・表現に驚いた。

写真が無かったあの時代に動体視力を屈指して描いた波や河の流れ、滝の流れ、雨の描写はある意味、心眼であるからこそ描けるものだ。
人間は同じ目の機能をもってしても世界にこのような水の表現をするアーティストは少ないし日本にでさえその後の追随は少ない。

日本画と並んで日本たる芸術である木版画を専攻する学生が今持て多くないのはある意味嘆かわしい。

「赤富士」の名で知られる《冨嶽三十六景 凱風快晴》など、北斎(1760-1849)の作品は、日本人のみならず、西洋の人々も魅了し続けてきました。かのゴッホが手紙の中で何度もその名をあげているのもその一例です。

パリのフランス国立図書館と、ライデンのオランダ国立民族学博物館には、日本人の暮らしぶりを描く作品が所蔵されています。オランダの画用紙に描かれたこれらの作品は、明らかに北斎の画風であり、実はオランダ商館長と、シーボルトが持ち帰ったものなのです。文政年間(1818-1830)、オランダ商館長は、4年ごとの江戸参府のたびに北斎などの絵師のもとを訪れ、その制作を依頼していたのでした。

そして、今回、オランダとフランスに分蔵されていたこれらの風俗画が、両館の協力を得て初めて同時に里帰りすることになりました。本展では、これらの作品によって、これまで“知らなかった”北斎像をさぐり、北斎とシーボルトの交流にも着目します。と同時に、おなじみの「冨嶽三十六景」や『北斎漫画』のほか、版画や版本、肉筆画、摺物など、初公開を含む北斎の名品を幅広く紹介します。“知らなかった北斎”と“知っている北斎”、ふたつの視点から迫る本展で、豊かで力強い北斎の芸術世界をお楽しみください。