私はフランク・ロイド・ライトの近代建築は詳しく知らないが彼の造作は嫌いではない。フランクロイドライトの邸宅のオーナーのインテリアを見入ると不思議と私の好みのものがある。▼
一つは当たり前だがフランク・ロイド・ライトのオークパーク・ミッションスタイルともいえるステンドグラス。そして一つは彼の照明スタイル。そして赤を主体としたペルシャ絨毯。そしてアーツ&クラフトの家具、である。
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中でもスティックリーのモーリスチェアーは私の好きな椅子のひとつであるがとりわけ目を惹くのがジョージ・ナカシマのロングアームのラウンジチェアーやコノイドラウンジチェアーなどである。私はジョージ・ナカシマほど木の魂を感じて仕事をした家具職人をいまだ知らない。
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ハーバード大学院建築まで卒業したナカシマは1934年パリを発ち、インド・中国経由で日本に向かう。 帝国ホテル建設の際にフランク・ロイド・ライトに伴って来日し、東京事務所を開設したアントニン・レーモンドの建築事務所に入所するためだ。(同僚に、前川國男・吉村順三。 )
1941年シアトルからカリフォルニア州までアメリカの建築視察旅行に出掛けて「これからの時代こんな建築がまかり通るなら・・・」とフランク・ロイド・ライトの仕事に失望し、自身が最初から最後まで統合できる新しい職業を見つけることを決心。家具の世界に踏み込んだ。
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今多くのインテリア、空間デザインの専門家たちに好まれる巨匠フランク・ロイド・ライトとジョージ・ナカシマ。
180度違う世界を目指した彼等の作品を一つの空間に置く摩訶不思議な矛盾性をみることも少なくない。空間にはつねにバランスが必要なのだ。
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すなわちフランク・ロイド・ライト無くしてジョージ・ナカシマの輝かしい名作は生まれなかった。歴史はいつも皮肉な哀愁が漂うものだ。