「箱根の山は天下の険、渡るに渡れぬ大井川」
いわずものがな江戸に詠まれた歌である。江戸の時代に大井川には橋がなく東海道の旅人は大井川の機嫌を見て渡るに苦労したようである。

JR東海が構想するリニア中央新幹線が、実現へ向けて大きく動きだした。国土交通省は昨年末、同社に対して輸送力など四項目の調査を指示。JR東海はこれを受けて通過が想定される自治体と、ルートや中間駅の設置場所をめぐる調整を本格化させ、二〇二五年に東京−名古屋間の開業を目指す。最速列車はこの区間を約四十分で結び、現在の「のぞみ」より一時間も短縮する。

40分なら早くてビジネスには便利である。今の状況と比較すれば着席しておしぼりがまず出てきてその後乗車券のチェックがされる。この時点で大体20分経過だ。窓の外を見て座席に入っている雑誌に眼を通すと15分。これで35分だ。車内サービスの音楽をヘッドフォンで聞く時間もなくおそらく10分前には降車客へアナウンス。先座ったばかりだが、もう降りるか。

日本橋から出発して人生一度のたび伊勢神宮へ夢を馳せた江戸の旅人。まだ見ぬ神宮へ様々な情景に思いもひとしおだっただろう。人の再会に夢を馳せた時代もあった。3時間の列車内で人と会う前に様々な情景を浮かべただろう。リニアモーターカーは箱根も、大井川もまさに瞬時に通り越す。見る間もなかろう。確かに短時間の旅程はべんりである。
ただ高いお金を払ってあまりにも慌しい旅程が果たして発展といえるのか、ふと疑問に思えてならない。