
最近の僕の映画のはまりは「This is it」でもなく「カールおじさん」でもなく「アバター」でもなくヒッチコック氏の映画である。特に最近何度も見ているのが彼の白黒(モノクロ)時代の映画である。
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1899年にロンドンに生まれ、写真技術に興味を持ち、ロンドンの映画会社で働き次第に頭角を現した。とはいっても徐々にではなく天才的に突然にである。
『三十九夜』『バルカン超特急』らは初期の代表作といえよう。活躍のうわさは海を越えハリウッドへ。デヴィッド・O・セルズニックの依頼で彼はアメリカ合衆国で映画製作を行うこととなる。
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ハリウッドでの彼の幕開けである記念碑はいわずと知れた名作1940年『レベッカ』だ。英国貴族屋敷での出来事を描くサスペンスで、最近でも日本で演劇化されてご存知の方も多いと思う。何しろその舞台背景といい衣装といい醍醐味がある。あまり知られていないが同年の『海外特派員』は負けず劣らずの大傑作でいかに彼がアメリカの資金をバックに伸び伸びした意気込みをかけて撮影したか窺い知れる。
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申し訳ないが1939年までと1940年〜ではあまりにも撮影資金が違いすぎて比較するまでもないほどだ。いくら白黒でも違いははっきりしている。心して選択されたい。
1950年代〜は、ヒッチコックの黄金時代と言える。
『舞台恐怖症』 - Stage Fright (1950)
『見知らぬ乗客』 - Strangers on a Train (1951)※
『私は告白する』 - I Confess (1953)
『ダイヤルMを廻せ!』 - Dial M for Murder (1954)
『裏窓』 - Rear Window (1954)※
『泥棒成金』 - To Catch a Thief (1955)※
『ハリーの災難』 - The Trouble with Harry (1955)※
『知りすぎていた男』 - The Man Who Knew Too Much (1956)
『暗殺者の家』のリメイク
『間違えられた男』 - The Wrong Man (1956)
『めまい』 - Vertigo (1958)※
『北北西に進路を取れ』 - North by Northwest (1959)※
『サイコ』 - Psycho (1960)※
『鳥』 - The Birds (1963)
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カラーに入ってからの彼の評価は云うまでもないがモノクロ時代に培った彼の画面構成などは現代に失われた映画ならではの芸術性や演出技術本位のリアリティーが感じられ、今のリアリティーをより追及している現代映画の方が逆に陳腐で軽薄な画面のようにさえ感じてしまうのだ。彼の映画で好まれた題材はずばり「脅迫観念」や「思いつきの恐怖」また「日常に潜む偶然性」に他ならない。常に目線が日常から向けられているので見ているほうもよりドキドキして画面に引き込まれる。
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お酒を飲みながら時にはヒッチコック氏のモノクロサスペンスを観るのも乙なものだ。モノクロの画面から無限の色彩感覚が感じられ陶酔すること間違いないだろう。