VANをご存知であろうか?僕ら世代には本質的には関らないこのアイビーこそ日本的アメリカ東海岸トラッドを持ち込んだ伝説的ブランドである。このスタイルはいうまでもなく1960年代まで東海岸の裕福なエリート学生やOBたちのファッションライフスタイルとして確実にそこに存在していた。あえてそう書くには理由がある僕がアメリカの大地を最初に踏んだ1980年代初頭にはすでに「アイビールック」のかけらもそこには無かったからである。さてそんなアメリカントラッドに真っ向から革命を起こしたのが誰あろう「ラルフ・ローレン」その人なのである。▼
60年代後半に常識破りの4インチ幅のド派手なネクタイで彗星のごとくデビューした彼であるが(其の頃は、brooksの社員であったことは有名な話だ)
デビューから2年足らずで全米での活躍を約束されたコティ賞を獲得しているのだ。
英国の貴族社会のファッションに強い憧憬を抱きブルックス時代のI型に代表されるアメリカントラッドと英国CORDINGSなどに代表されるブリティッシュトラッド(カントリースタイル)見事にブレンドしたいわば「American British」スタイルを確立していったのである。このスタイルはPOLOⅣtypeと称される。
▼
POLOⅣtypeとはいかなるものか。もう少し詳説したい。Brooksなどに代表されるAmerican styleのNatural shoulderにBritishエッセンスである脇に絞りを加えた。これだけでもかなりブリティッシュタイトなイメージとなる。さらにVゾーンを広く取り遊び心を取り入れた。これは胸元のタイを一層演出することとなる。これをラルフローレン的「カントリージェントルマン」スタイル+ポロⅣ型として確立したのである。実は実はであるがこのようなスタイルは当時の英国には全く皆無でありラルフローレン自身が身勝手に英国に憧憬して想像で造り上げた産物なのである。このスタイルに彼はさらにウィングチップやフェアアイルニット、ツイード素材などを合わせてより虚構をノンフィクションに仕立てていったのである。
▼
これにまんまと英国以外の人々が騙された(言い方は下品である)のはいうまでも無い。1976年に西武百貨店のライセンス契約を結んだラルフローレン。
この英国もどきスタイルに「VAN卒業生」たちがいっせいに群がったのである。
いわばラルフローレンのツイードジャケットを着てフェアアイルニットのベストを着込みそしてオックスのシャツ、ペイズリーのネクタイ、英国仕立てのウィングチップ
、コーヂュロイパンツを着た英国もどきかぶれの人が日本にも登場したのである。
そういう意味で僕の1980年代はBritish IVYの時代と呼ぶことができよう。
然しながらこのBritish IVYを英国のオックスフォードを代表する学生のファッションだと勘違いしてはいけないのだ。
▼
2年前に垣間見た英国学生はBritish IVYのそれではない。いわばJack WillsやAlbam clotingなどに傾倒されそのそれはAmerivan Rugged Fashionが皮肉にも本場のBritish IVYとなっているのである。これは大変皮肉な話だ。エリッククラプトンの持ち物にもグルカやレッドウィングなどアメラギなアイテムが多いことからもそれは伺える。
▼
ラルフローレンのブリティッシュアイビーの想像の世界。この虚構は今でも続いており我々はその渦中にある。もはやその虚構は彼の世界の心臓部アイデンディティーの核となっている。
虚構も半世紀続けば歴史となる。
歴史とはそんなものかもしれない