最近の病院患者さんの保険傾向を見ると30%負担患者が毎年少なくなっている。病気自体はおそらく不変であるだからここでも不況は影響しているのだろう。
特に大病院で目立つのが0%負担、要するに医療費無料患者が目立つことだ。
これは増加しているのではなく、30%や10%の負担患者が減少しているから相対的に目立つのである。

その医療費無料患者の中でとりわけ目立つのは生活保護患者さんの増加である。
後発医薬品利用の指導強化=生活保護受給者対象、費用を抑制―厚労省 生活保護受給者数は長引く不況の影響により、昨年11月時点で約197万7000人。09年度の支給総額は 3兆72億円と初めて3兆円を超えた。医療費補助は生活保護総額の約半分を占める。

不思議な話だ。長い不況のために高額な医療費が払えないという苦情はよく効く話だ。高額な抗がん剤の場合、年間で1千万円を優に超える時代だ。
これは決して大げさな話ではない。
分子標的薬全盛の時代で肺がん、大腸がん、腎臓癌など医療費は軒並みうなぎのぼりだ。学会でも一人に対して三年間で「一億円」超の医療費を要した患者が報告されたがこのままでは医療保険自体の破綻の原因になりかねないほど深刻である。

そんな中、生活保護患者さんは涼しい顔でそんな高額な抗がん剤治療を無料で受けられるのだ。
「今の時代、長生きするには、お金持ちか生活保護でないとダメだ」ととある外科医が冗談で言っていたが実にそれはナマメカしい話でもある。
お金がかかるから病院にもいけず末期がんとなった話を聞くとなにか「矛盾」めいた社会構造を感じるのは確かだ。
深夜の救急外来が「無料」という理由だけで「生活保護」患者がかなり来院している事実も由々しき問題である。
生活保護者のために国民一世帯一年で約3万円負担している現実。
その生活保護費で賄われた約25%がギャンブルに消えたりしているというレポートも本当であればかなりの問題である。

生活保護は非常に福祉国家、民主国家においては大切な法律である。
一方でこの日本の医療保険制度も世界的にみて奇跡的な素晴らしい制度である。
この医療保険制度が生活保護法のために破綻する可能性があるのなら現実的に見直していく必要があるだろう。「弱者」に厳しい政策はとかく批判を受けやすいが医療保険がもしそのために「50%負担」増となるなら皆、やむなしと考えるだろう。