69c8a321.jpg示指が薬指よりも長いと前立腺がんリスクが低い
〔ロンドン〕 ワーウィック大学(コベントリー)のKen Muir教授や王立マースデン英国保健サービス(NHS)基金トラストのRos Eeles教授らは,示指が薬指よりも長い男性では前立腺がんリスクが低いとする研究結果をBritish Journal of Cancer(2010; オンライン版)に発表した。

発症リスクが3分の1低い
 今回の研究はProstate Actionと英国がん研究会(CRUK,ともにロンドン)の助成を受けたもので,解析の結果,示指が薬指より長い男性では,その逆の男性と比べ前立腺がん発症リスクが3分の1低いことが分かった。
 共同研究責任者で,英国がん研究所(ICR,ロンドン)にも所属するEeles教授は「今回の研究結果は,特に60歳未満の男性において,相対的な指の長さを基に前立腺がんリスクを簡便に判別できることを示しており,指の長さのパターンと,家族歴や遺伝子検査といった他の因子を組み合わせることなどにより,スクリーニングに適したリスクを有する男性をふるい分けられる可能性を示唆している」と述べている。

 今回の研究では,1994〜2009年の15年間に,王立マースデンNHS基金トラスト(ロンドンとサットン),ノッティンガム市立病院(ノッティンガム),王立ハラムシャー病院(シェフィールド)において,前立腺がん患者1,500例超と健康な対照群3,000例超に指の長さの組み合わせが異なる複数の絵を提示し,自身の右手指に最も近いものを選ばせ,結果を解析した。最も一般的な指の長さのパターンは示指が薬指よりも短いもので,対象男性の半数超で認められ,示指と薬指が同じ長さの男性は約19%であった。これらの群の前立腺がんリスクは同等であったが,示指が薬指よりも長い群では,前立腺がん発症リスクが33%低かった。60歳未満で示指が長い男性では,前立腺がんリスク低下率は87%と,さらに著明であった。

子宮内の性ホルモンレベルが関与
 示指と薬指の相対的な長さは出生前に決まり,胎児が子宮内で曝露された性ホルモンのレベルが関係すると考えられている。テストステロン曝露が少ないと示指は長くなることから,Muir教授は「出生前のテストステロン曝露が少ないことが,後の人生における前立腺がん発症リスクの低下に寄与するのではないか」と指摘している。こうした現象は,HOXAとHOXDという遺伝子が,指の長さと性器の発育の両方に関係しているために起こると考えられる。同教授は「今回の研究は,胎児が子宮内で曝露されるホルモンレベルが,数十年後に影響を及ぼすことを示している。研究を進めるにつれ,疾患発症に関係すると思われるさまざまな因子をさらに見つけることができるだろう」と述べている。

Prostate ActionのEmma Halls理事長は「今回の結果は,前立腺がん危険因子の同定に向け,新しい一歩を提供するものだ。こうした危険因子の同定は,おそらく前立腺がんの予防・治療における現在の研究の中でも最大の課題といえる。しかし,前立腺がんの年間死者数減少への道のりは遠く,そこに到達するためには,あらゆる分野において,さらなる研究と教育が必要である」と指摘している。