テレビをつければ父が
「パンダか・・」とつぶやく。
なぜに白と黒の眼がぶたれたようなクマがすごいのか
判らないようだ。僕は「かわいい」と思った。
上野動物園にジャイアントパンダのランラン、カンカンが来たらしく
もうフィーバのようだ。
父ミフネはどちらかというと佐藤内閣退陣で田中角栄ファンなのか
日本列島改造論含めて熱く酒を飲みながらいつも語っていた。
「パンダより政治」みたいだ。
朝早くから父が
「よし名古屋でもぶらつくか」と
母フロッグは急に慌てる。
行くとなったらいざ鎌倉。
逆らったら大変。遅れたら大変なのだ。
ボルテージがあがり早巻きに準備。
僕は一応、よそ行きのボタンジャケットと特注の帽子を被せられた。
名古屋でこの間、母が誂えた物だ。
名鉄電車にゆられて到着。父は今日機嫌がよかった。
数分してまた父ミフネが開口する。
「よし、そうだ京都へ行こう」
この台詞はJRが使うまえから父が使っていた台詞だ。
母が慌てる。お金を確認する。多分日帰りのつもりか。
新幹線に乗る。父ミフネはグリーン車へ直行した。
慌てて母フロッグが財布を出す。
京都へ着いた。父が呼ぶ「こっちこっち」
タクシーへ乗る。
「金閣寺へ」
紅葉が綺麗だった。父も機嫌がよい。
「こっちこっち」
またタクシーに乗る。
「そうだな、京都ロイヤルホテルへ頼む」
母が財布を確認する。
どうやら思いつきで「宿泊」を決めたらしい
父は笑っていた。そういうことが楽しいらしい。
僕もこういうのはスリルがあって好きだ。
母は困っていた。
姉はだまっていた。
僕は笑っていた。