ed2d3a01.jpg前世というとなんかマヤカシのような話である
僕が、人をみてなんかそのひとの時代背景を感じてしまうのは
たんなる第六感なのであろうか
時には着物が見えたり、時には洋装がみえたり・・・。
ひどいときは生活風景まで?
こうなると妄想壁と勘ぐられるのでやめよう。

僕が一枚の絵に出会ったのはもう6年以上前のことである。とある骨董屋で階段の踊り場にかけられていたものだ。(骨董店といってもアンティーク家具屋でありそのmarqueterieの価値さえも知らない、興味もない店主だった)かなり大きなその絵は油彩ではなく、寄木アートであった。いわゆるmarqueterie:マルケトリーというものだ。アールヌーヴォー期にはガレなども含めて多用した技術。本来家具などに細工されているものが多いが、この絵のように絵画として作られたり、本来家具に施されていたものをその後、絵画に仕立て直したものもある。時代は1890年代から1920年代に集中する。しかしながら意外にも「アート」としての数は少なくサザビーズやクリスティーズでも出品は限られている。このmarqueterieは横がなんと135センチを超えておりどちらかというと大作の部類に入る。また重さも15kgを超える大変な重さ。問題はその画題であろう。フランスのその作品には女性が馬にまたがって楽しそうに何処かへ出かける様子が描かれている。
馬のあとには犬が追随している。
よく見ると女性の肩には「鷹」が乗っているではないか。
なるほどこれぞ天下にとどろく「鷹狩り」である。
鷹狩と聞いて鷹を狩ると勘違いしてはいけない。鷹で狩をするのである。自ら教育した鷹を放ち、鳥を捕らえる。その鳥を犬が捕まえるものなのだ。だから鉄砲など野蛮なものは使用しない。上品で高尚な「狩」なのである

話をもどそう。その鷹狩図のマルケトリーの出典は「フランス」である。年代は1920年代。何よりも鷹狩は「男」の遊びであるのに「女性」が此処には描かれている 6年前、その絵をどうしても気になり購入した。そのmarqueterieは我が家の二階に上がった中心に据えられている。不思議にもそれを置いた途端にその場所にはなぜか1925年代周辺のものがそれもフランスものが集まった。意図はせずにだ。最近になってそれらの出典が近似していることを知って唖然となったのだ。
僕にはその絵の女性の一人(勿論、中心人物)がいつか出会える(もはや会うことを宿命付けられた)ことを予感させていたとでもいうべきか、パタちゃんの授かりを聞いたときもその印象が強く最初から「女性」であることを感じていた。とても変な奇妙な気持ちに襲われたのである。

女性の鷹狩りの話を戻そう。このmarqueterieはまさに文化的にも芸術的にも「重要」な価値を持つことが次第に分かったきたのである。ひとつはジャポニスム。まさにこの馬の力感といい1900年代に一世風靡した北斎の影響が見て取れる。色彩も色合いもどこか「浮世絵」様なのだ。もう一つが「女性の台頭、平等運動」である。1910年以降のフランスはまさに女性の台頭が一つの文化だったのだ。女性の喫煙文化の誕生もこの頃である。ルネ・ラリックがその需要に対応すべく素敵なアッシュトレイをたくさん女性用に誂えたのもこの頃である。このmarqueterieに描かれた画題はまさにそんな時代背景(女性台頭)を象徴する「婦人の鷹狩り」なのである。
男勝りの女性であることは間違いない。パタちゃんにはこの話はしばらく伏せておこう。今に僕らも鷹狩されないように・・・。くわばら、くわばら・・