山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情(じょう)に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈だ。兎角(とかく)に人の世は住みにくい。
▼
夏目漱石の代表作「草枕」の出だしである。平家物語と並ぶ出だしの名文とされるが最初の出だしがもっとも理解しやすくて読めば読むほど難解な小説と名高い。
今から80年以上も前に「人の世は住みにくい」とした漱石の眼力は実に鋭く、どこまでも深遠でありこの「草枕」の主人公絵描きを通して人の世の難しさ、哲学、情を含めて生きることの難しさを認知している悩み抜いた衰弱した漱石だからこそ挑戦した文学である。これを「坊っちゃん」の後、送り出しているところからして自分自身の潜在している内を早く吐露したい、そんな一心で書き綴ったに違いない。そう思うのである。
▼
漱石は更にこう綴っている。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
▼
今の国を漱石ならどう見るであろうか?
今の世だって作ったのは神でもなければ鬼でもないはずだ。
但し向う三軒両隣りにちらちらするただの人が少なくなってきたのであろう。
ゆえに漱石曰く今の国は「人でなしの国」なのかもしれない。
ただ「人でなしの国」を立て直すのもやはり人でしかないのだ。
ラジオやテレビは未だ空転する日本の政治や経済危機の報道が繰り返される。そんなリモコンを足の指でほいとつまんで電源を切る。外では雨音が寒いのか暑いのか中途半端な温度感でしとしとしている。
小説「草枕」の出だしを回読しながら妙に納得する雨の夏夜である。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情(じょう)に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈だ。兎角(とかく)に人の世は住みにくい。
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夏目漱石の代表作「草枕」の出だしである。平家物語と並ぶ出だしの名文とされるが最初の出だしがもっとも理解しやすくて読めば読むほど難解な小説と名高い。
今から80年以上も前に「人の世は住みにくい」とした漱石の眼力は実に鋭く、どこまでも深遠でありこの「草枕」の主人公絵描きを通して人の世の難しさ、哲学、情を含めて生きることの難しさを認知している悩み抜いた衰弱した漱石だからこそ挑戦した文学である。これを「坊っちゃん」の後、送り出しているところからして自分自身の潜在している内を早く吐露したい、そんな一心で書き綴ったに違いない。そう思うのである。
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漱石は更にこう綴っている。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
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今の国を漱石ならどう見るであろうか?
今の世だって作ったのは神でもなければ鬼でもないはずだ。
但し向う三軒両隣りにちらちらするただの人が少なくなってきたのであろう。
ゆえに漱石曰く今の国は「人でなしの国」なのかもしれない。
ただ「人でなしの国」を立て直すのもやはり人でしかないのだ。
ラジオやテレビは未だ空転する日本の政治や経済危機の報道が繰り返される。そんなリモコンを足の指でほいとつまんで電源を切る。外では雨音が寒いのか暑いのか中途半端な温度感でしとしとしている。
小説「草枕」の出だしを回読しながら妙に納得する雨の夏夜である。