僕は
明るい笑顔に
小さな唇に
話しかける

僕は
青い雲間に
白い陽光に
話しかける

僕は
寝ぼけたお尻に
寝ぼけた鼻と指に
話しかける

僕は
革命を終えた戦場に
革命を控えた国境に
話かける

僕は
病みいた人に
治癒した人に
話しかける

僕は
物をうる店主に
物をかう客人に
話しかける

僕は
坂道を走る自転車の少年に
ぐるぐる回る三輪車の少女に
話しかける

僕は
悩み多き青年に
憂いを知らない少女に
話しかける

僕は
ベンシャーンの線に
ジョージナカシマの木肌に
話しかける

僕は
マスターからの
手紙の行間に
絵本の背景に
話しかける

僕は
唇を優しく閉じた父の眼に
大きく口を開けた母の鼻に
話しかける

僕は
ギャルリーの壁に
ギャルリーの作品の陰に
話しかける

僕は
隣で寝入る寝息に
隣の頭の夢を食べる夢食ひこびとに
話しかける

話しかける
その後の沈黙の余韻に
また話しかける

魂に話しかけ
魂から話しかけられ
また僕は
何かに話かける

博愛という
友愛という
アスファルトに書き付けた
乾いた文字を踏みつけて
僕はまた
何かに話しかける


         soy 2013.6.30