フランスを代表するbrandでありながらこの両者の歴史はどうしても相容れない溝が存在する。
王家御用達であり馬具を歴史背景とするエルメス
庶民を含めた富裕層御用達であり旅行トランクを歴史背景とするヴィトン。
当初のbusiness的大成功はご存知のとおりヴィトンが一歩も二歩もリードしていたのであるが
あの忌々しいモノグラムが浸透しすぎた過剰飽和はまさに「亀とうさぎ」のレースを思い出させる。
勿論、うさぎがルイヴィトン、亀がエルメスである。
追いつくまでは程遠い距離差があった両者の間隔はここ最近5年間のアジアの大成功で一気距離が詰まり
今は長足のスピードで抜き去りつつある。
最近のルイヴィトン側の焦り、焦燥感は吸収工作、金融戦争、裁判を含めて色濃く現れている。
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エルメスは今こそ最大のchanceとばかりにこの数年で拡大、拡張路線へと舵を取る。
中国に新店舗を立て続きに出店、また日本既存店の拡大やリニューアル、新たな基準で採用、教育された店員の大補充も含めて準備万端なのである。男性定員の補充は最近とても力を入れており彼らはとても質が高い教育を受けている印象だ。これだけ拡大路線に転向したからにはおそらくバーキン、ケリーの職人拡大を含めてかなり大規模にテコ入れが出来ている証拠であり名実ともに世界ナンバーワン企業を目前としている大規模職人的大工房は存在ありと見られている。昔で言うところの「この商品は職人が手作業で一年待ちのオーダーを・・・」などという悠長な話は過去の話となるであろう。
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ルイヴィトンの今後は大変部が悪い。大変誰でも分かるicon、モノグラムやダミエ、エピなどスーパーアイコンに依存してきた代償は大きく、大きな変革の舵取りは今になって困難となり服飾業界の参入や時計業界への参入も決して成功とは言えない厳しい惨状である。ルイヴィトンも今になって既存の「アルマ」などマニュファクチャーや革素材、作りを前面に出した新たな「職人的気質」ニューアイコンに仕立てたいところであるが目の肥えたエルメス顧客を呼び戻すのは至難の技かもしれない。
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一方のエルメスの貯金は何なのか?それは最近出版されたエルメスのスポーツライフに関する写真集を見れはわかろうものだ。手にしてみればこのbrandがまるで消費者と企業との関係ではなく、アートを扱うギャラリーとお客、もう少し進んで美術館とお客という観点にまで落とし込んでいるところの芸術因子に特化した精神的貯蓄が垣間見ることができる。まさしくこれがエルメスの貯金なのであろう。
芸術こそ人生なり、人生は芸術なりとはいかにもフランスらしい表現であるものである。
このエルメスのぶれない独特の芸術的精神論が今の異常とも言える成功を塵が積もるようにそびえたたしたのであろう。
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ひがんだうさぎは怖い。今後の両者の冷戦は果てしなく続くと思われるが共にフランスの文化的遺産でもあり仲良く切磋琢磨してほしいと切に願う。
散財した資料:
エルメス:4カラーnecktie、ボリード、ポケットチーフ、ニットタイ、ボリード1923、チェンジトレー、馬の足台、写真集
ルイヴィトン:エピ パープル財布、トランクの100年