for Shore
「前回に続いてボタンの話です。」
「もういいじゃないですか・・やめましょう」
「だめです。約束ですから」
「読者だって気にしてませんよ」
「今は誤表示は偽装扱いされますよ」
「しょうがない、やりましょう!『3ボタン段返り』ですね。」
「よろしくお願い申し上げます」
「まずこの生まれた背景には二つのキーワードが絡んでいます。いわば『イタリアと合理主義』ですね。」
「その辺をよく説明してください。」

「サンフランシスコの前回説明したアイビーの老舗の親爺さんに聞いたとっておきの話です。
『Americaの洋装には英国が影響しているのは勿論であるがそれを持ち込んだのはItalia移民たちだ。所謂、イタリア系アメリカ人とされる人たちだ。彼らはアメリカでの洋装を1850年前後から支えたものだ。勿論、ブルックスやノーマンヒルトンの下請けには沢山いたし、もっといえばクリーニング屋さんにもいた。当時は3ボタンが最もカッコイイとして流行っていた。ブルックスブラザーズの縫製工場に勤めるイタリア系アメリカ人ニコライもそんな一人だ。彼が街でたまたま眼にした段返りの3ボタンが話の始まりだ。えっつ何故って?その段返りは意図的に生まれていたわけでもなく当時のクリーニング屋さんが間違えてjacketのラペルを折り間違えてしまったんだ。稀ながら偶然に生まれた言わば新型の2釦ということになる。彼はそこに新たな潮流・新鮮なVゾーンを見た。』そんな話の始まりだったんだ。」

「それはいつ頃って言っていた。」

「それが彼の資料によると1900年頃の話だそうだ。まだその親爺の話は続く。『当時の3ボタンは恰好良かったんだが米国の合理主義には受けが悪かった。既にアメリカには1896年、シャツの襟を常に一定のポジションへ誘うポロカラー、お馴染みのBDシャツが提案されていたからね。3ボタンjacketの窮屈さを打破してアメリカらしいゆったりとしたシルエットに合うボタン位置はどうしても低目の方が合理が合った。そこでイタリア系アメリカ人たちは手持ちの3釦jacketのラペルを深く折り曲げて『3ボタン段返り』を提案してみた訳だ。当時はそんな呼び名も無いわけで資料ではnon-functional third button=無機能な3ボタンって言っていたぐらいだ。実はブルックスブラザースでは1901年からポツラポツラこの!『3ボタン段返り』を販売していたらしい。勿論、それからこの流行を確固たるものにしてブルックスブラザースいち押しの定番トップジャケットアイコンとして売り出すにはそれから17年もかかったけどね。それが、言わずもがな1918年発売のI型jacket、No. 1 Sack Suitなんだよ。実際にはこのサックスーツってのは元々イギリスでいうところのラウンジスーツってことになるが起源はフランスとされている。それがアメリカに伝わってちょっと大きめのワーキンギジャケットに変貌しながら1895年頃にはナチュナルショルダーのサックスーツに變化してきた、但しボタンは段返りではなかったけどね』って。その話はまさに眼から鱗だったね」
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「イタリア人の関与は実は本国イタリアでも繋がってますよね。1800年代英国で働いていたイタリア移民たちはその職を求めてアメリカと本国イタリア帰国組に二分された。前者は上記の話とつながり、後者の筆頭がブリオーニに繋がる。
現代のイタリアでLBM1911、ブルネロクチネリがこの『3ボタン段返り』を作っているのにはこういうイタリアの血が地下で繋がっている?」
「大袈裟かもしれないがそうともいえますね。偶然ではありません。」
「あっともう一つ忘れていた!元々No. 1 Sack Suitってのは1918年発売って言っていたけど先言ったように1900年とか1901年とか資料的には前倒しになったようだけど、1895年が起源ともされている。この時にはボタン数にはこだわりも無くて、段返りにもなっていなかったらしい。そう思うとBDshirtポロカラーとも時代的に被るわけで・・・ただやっぱり、No. 1 Sack Suitが学生の間に市民権を得て流行したのは1918年以後、1920年代っというのは間違いがないわけでその時には『3ボタン段返り』は完全に定着していたってこと。」
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「こうしてみると米国合理主義(プラグマティズム、ラショナリズム)は5 種の神器を生み出した。
まずは1870年デニム、続いて1896年ボタンダウンを、そして1901年『3ボタン段返り』、そして1934年ペニーローファー、そして1944年の超オンス帆布トートバッグ。此処にかなりイタリア系の関与が隠されている。面白い話ですね。」
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「ボタンは当時アクセサリー、乗馬服やコートから始まり、4つ釦jacketから3つになり、『3ボタン段返り』が生まれ、今は二つボタン、そして一つ釦jacketも提案されている。次に来るのは何ですか?」
「ボクなりに色々折り目を変えて面白いなと気づいたのは『2ボタン段返り』ですね。これはかなり脈があります。
タリアトーレが得意とする一つボタンjacket。このラペルが段返りでもポイントになりそうです。」
「将来、この『2ボタン段返り』が将来定番化したらその起源は・・・?」
「その起源はこのスタイルブログとなりますね。おっほん!」
「木に上りだしたところでオアトガヨロジ・・。」
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参考文献>>
The Ivy League Style
Introduced to America by Brooks Brothers in 1895, the American Sack Suit is a variation of earlier Victorian-era lounge suits. In its purest and most correct form, the sack suit is single-breasted with two or three buttons, centre vent at the rear, natural shoulders, and has little or no shaping around the waist (no darts, the vertical seams on the front of the jacket reaching upwards from the hip pockets).

Sack suits first gained popularity among Ivy League students in the 1920s but remained an insider style until after World War II and a fashion cycle that made it widely popular in America for over a decade. Long after the style had been a marker of America’s academic elites, the so-called Ivy League Look became an “everyman” style of middle-class aspiration from the mid-1950s through 1967.

Today the Ivy League style or sack suit is available only from a few retailers such as J Press and Brooks Brothers. While J Press sells sack suits almost exclusively, Brooks Brothers usually offers only a few sack suits each season.

4 From the Brooks Brothers website (www.brooksbrothers.com): “1895 The Sack Suit: Brooks introduces the No. One sack suit. Regarded as the first genuinely American suit, and designed to fit all body types, the suit offers soft natural shoulders, a single-breasted jacket, and full, plain-front trousers”.

5 Nicholas Antongiavanni, The Suit (New York: HarperCollins, 2006) pp. 55-56.
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