「価値を認める顧客とのみ取引する」
老舗ブルックス ブラザーズの哲学とされている。
創業1818年。したがって3年後の2018年に創業200周年を迎える老舗ブルックス ブラザーズ。
ただ今回ロンドンやスコットランドのブルックスブラザーズ店舗を視察して、また新体制のブルックスブラザーズジャパンの1年を振り返り少なくとも米国外特に英国、日本では苦戦を強いられている印象だ。
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ブルックスブラザーズジャパン。
売り上げ比率20%とされているレディースの増加とメンズ米国製造回帰、若者学生層開拓。この三本の矢はまさにアベノミクスならぬブルノミクスとして目指したものであるがことごとく散ってしまった。まさに無残にどの矢も刺さらず状態。
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実はまことしやかな話がある。
多くのハイエンドブランドが世界中に存在する。ブルックスブラザーズはこの日本でどのような所得層に支持されているか。「このブランドを認知しているか」と「このブランドが好きか?」という問いには多くの富裕層がYesとしているブルックスブラザーズだが「このブランドを定期的に購入しているか」と問われると我が国では圧倒的に富裕層ではなく中流層がYesとしている事実に改めて納得してしまう。
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言ってみれば世に「エンゲル係数」があるように収入に占めるブルックスブラザーズで購入する割合、所謂「ブルックスブラザーズ係数」が高いコアな往年ファンに支えられてきたブランドと言える。
新体制のブルックスブラザーズは新たな改革ばかり目指したために唯一の心臓部、そんな価値を認める顧客を蔑ろにしていると有名雑誌ライターでもあり伊勢丹でのイベントが大好評である友人、服飾評論家A氏は語っている。
「老舗が何周年カウントダウンだと今迄の顧客を袖にして、お祭り騒ぎしていると祭りが終われば、往年ファンの顧客はそっぽを向いて店員しか残らなかった、今のブルックスブラザーズJの動向はまさにそのもの」
実際、後3年半余りで200周年そして日本上陸40周年、ローマ一日にしてならず、その時こそ今までブルックスブラザーズJを支えてきたはずのスペシャルカスタマー制度を廃止決定。
さらにそのアッパーグレード、プレミアムカスタマーの永年制度をこれも廃止決定してしまったのである。いずれも2016年1月からであり200周年直前での決定。実質廃止は2015年1月と同義。なぜに今なのか?
また大手銀行総研のB氏は
「 今の顧客管理においては年度実績移行主義、大手デパートも外商顧客をネームバリューではなく年度実績主体へと変化している。ブルックスブラザーズも古き体制を脱却して新たなシステム作りへと変革を目指した結果でしょう。
ただブルックスさんは紳士服比重の高い小売店、デパートカード同様な戦略が合っているかは微妙なところ。デパートさんは新規顧客登録が年度で入れ替わりが激しい。但し一旦、ゴールドの外商カードを渡した顧客からそれを取り上げるという戦略は未だ皆無。片やブルックスさんはそれさえも取り上げる?となると顧客システム変革は失敗すると総崩れもある。一旦手放した顧客はまず戻らないでしょう。経営陣も元トッズJの小布施氏を中心に店員教育の改革着手をしたかと思ったら今度は顧客管理システム刷新。本来ブランドバリューの底上げは原則新たな顧客の獲得を満たして更にそのニードを解析した後が原則。いい意味で現状のブルックスブラザーズJAPAN古体制の解体を目指したのでしょうが関西地区では大いなる反発を招いている。既存カスタマーピラミッドの上層改悪は時期尚早、ハイリスクローリターンと揶揄されかねない。」
「価値を認める顧客とのみ取引する」
老舗ブルックス ブラザーズの哲学とされている。
「 かつてのブルックスブラザーズ一時代を支えてきたスペシャルカスタマー並びにプレミアムカスタマーとともに200周年を迎えてこそ次なる201周年の真のブルックスブラザーズがあるんじゃないのですか?少なくとも僕らの知っているブルックスはそうであったはず。これでは価値を認める顧客さえとも取引しない。哲学からずれちゃいけないデスよ。」
前述A氏は熱く続けた。
長年プレミアムカスタマーである大阪の友人I氏は「 そもそも1年限りのものにプレミアムカスタマー呼ばわりされてもね。もともと特典なんて大したものでもなし、それをグレードアップするわけでもなし、何ですかね。今は「駆け込み修理」には行けども、往年ファンはなら腹を決めて神戸三田アウトレット、御殿場アウトレットでは必要十分として路面店でわざわざ買わないんじゃないデスかね。現場の店員たちも皆、首をかしげてますよ。」
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おりしもアベノミクスは停滞、GDP低下、また紳士服大手が収益悪化に直面している。2014年4〜9月上期の営業利益は、業界トップの青山商事さえ紳士服事業で前年同期比7割(68%)減へと急下降した。業界2位のAOKIホールディングスも、紳士服を含むファッション事業が赤字転落。いずれも下期に稼ぐビジネスモデルだが、今後も急速な業績改善は難しいとみている。
またここ数年後押ししてくれたアイビーブームも一段落し2015年以降両面にて見通しが厳しい。
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最もすべての誤算を感じていたのは米国本社。
まずはブラックフリースの休止! 200周年をもう目前としてトムブラウンとの円満な契約継続を勝ち取ることが出来なかった。おそらくトムの法外な契約料を飲むことができなかったこともあるが、何よりトムのプライド・尊厳を図れなかったことが一番の要因であろう。そのあとのかじ取りは見るも無残。 オウンメイクを廃止してゴールデンフリースへのかじ取り。ウーム 正直これは
今更ながら勝算0の敗北路線!としか言いようがなかった。そして何故かポロラルフローレンにおけるラグビーと並ぶカジュアル路線であったレッドフリースの浸透も厳しさを増してきた。
本家ラグビーは真っ先に撤退のれんおろし、今更レッドフリースどうたたむんだろう?
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ブルックスジャパンのプレミアムカスタマー廃止して以後、いいところなし。
なぜか打ち出した花火はPITTIでのランウェイ???
だってその前に、花になるようなデザイナー!明確に起用してもいないのに??
当然、本質の見えないランウェイとなり不発は予想の通り。現地での受けもいまいちであった。
どうせイタリアPITTIでやるのなら、驚愕のデザイナー起用のサプライズとともにランウェイをするべきだった。 古臭い代わり映えしないというか変にイタリアに媚びたゆらゆらのブルックスランウェイ、どう見たって200周年それ以後大丈夫と心配となる。
いまさらながらトムブラウンのカリスマ性は凄かった!というより仕方なく
相乗効果としてディテールに影響が出ていたほかのレッドフリースもオウンメイクも輝いて売れていたとみる。
サンローランを去ったエディ・スリマン!ハーバード大学を 卒業し、映画監督の肩書きを持っているデザイナー「ALEXANDER OLCH」!そんな圧倒的に影響力のあるデザイナー起用は今の単調な空気感のブルックスには必須かもしれない。
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財布の中身は厳しけどブルックスブラザーズサポーターは今まで支えてきたまさにけな気な往年ファンの中流層だ。
この精神性こそブルックスブラザーズ根幹、今それがここ日本で大きく揺らいで崩れようとしている。
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