このところ義父からの電話がなりやまない。

艶福家の義父が、生涯の友の糖尿病を患ってはや40年。

世界初の気ままな自由治療を自分で開発?してインシュリンを好き放題打ちからかして
医者から そんないい加減なやり方聞いたことないと卒倒されたぐらいのものだ。


ついに年貢の納め時、 一昨年は透析になってしまい
8歳の孫むすめに
「 受けたくない透析! 」という自由研究の題名は一等賞をとった。

逃げ惑う義父をリサーチして、なぜじいじは逃げ惑うのか絵本にまとめたものだ。

あの時も 電話がなりやまなかった。

「 そうまん どう思う、 透析はやるべきかのばすべきか やめるべきか 」

シェイクスピアのマクベスでも悩む問題なら 真剣になろうものであるが
「 やらないと死んじゃうんじゃね、やるで決まりでしょ! 」と言っても
翌日にはまた電話がなる。
「 もう少しなんとかのばせそうなアイデアが浮かんだ」とかいって

今回の電話は質が悪い

「 まあ 好き放題やってきて 命とられるわけじゃなくて糖尿病で足の親指が腐ってきたって?!」
「 本当に 指を切らないといけないのかい?」
「 そら 整形外科の先生だって 本当にやらずに済むなら やりたくないよ、 じいじの足のゆびなんて誰も欲しがらないんだから! むこうも嫌でもやらないとどんどん足全部が腐るから今は親指の第一関節だけで済むなら 早くやってほしいってことなんだよ」

「 そうか じゃあやるしかないか」

翌日も電話がなった

「 そうまん、 結局 病院へ行ってコロナも心配だし ちょっと1週間延ばすことにしたから」

翌日も電話がなった
「 もしやるなら 全身麻酔がいいの 局所麻酔がいいの 」
「 まあ 足の指切られるのみたいひとはいませんから 、全身麻酔で寝ているうちに思い切ったら」
「 それはそうだな 」

翌日も電話がなった
「 全身麻酔のときは おしっこはどうなるんだ 」
「 管入れられて勝手に抜かれとるよ そんなの心配いらんよ 」

翌日も電話がなった
ユリさんが どうせしょうもない内容だからと居留守を使っていた・・・

翌日も電話がなった
よっぽど大ごとでも起きたと思って 電話に出てみた
「 日赤組に指を詰めて指 納めてきたの? だいぶ悪いことをやってきたんだから 指の一本や二本あげてきたっていいじゃない 」
「 まだだよ ほんとうにやらなきゃいかんのかな? おどしてるだけじゃないの 」

またふりだしにもどった。

翌日も電話がなった
「 あのんの手紙がとどいたよ、 泣ける文章を書くね 彼女は! また書いて送ってほしい」

先ほども電話がなった
「 文章といえば 最近はエッセイに注目しているよ、お義父さん! お義父さんも名エッセイニストだったんだから(朝日新聞に記載していた?文化庁の人として!!しばらくimidasの日本の重要文化人物にも選出されていた”)書いた文章でもまた読ませてよ!」というと
「 待ってましたよ、 整理していたらまだ見せていないEl Salvadorの紀行文が出来てきたから今度渡すよ 」褒めてあげればおだてりゃで昇って昇って
指の事なんぞ忘れておしまいになる。

「 読ませてよ、出し惜しみせず、名文家 ここにありってね 」
「 じゃあまた 、 今日はありがとう 」 

電話は一番短くすんだ。
よしこれに限るぞ、 褒めて育てる いくつになっても ひとはこれに限るってね