皮と革は違うと教師から教わったのは小学生の頃だった。

いまだ生きている もしくは命を失った動物の皮膚を皮という。

そして それを 靴とか衣服とかの素材として成り立ったものを 革という。

どうしても その理由を確かめたくて イギリス・ノーサンプトンに向かった。

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今 現存するタンナーはいるか?という問いに街の反応は芳しくない。
「 今は無いんじゃないか?」

それはそうだろう そうかもしれない

ノーサンプトンは ある意味 なるがままにタンナーの街 そして靴の街になった。
むかし産業革命の頃に素材の良いイギリス家具のオークが沢山伐採されてこの街を起点に流通したという。その樹液がなにあろう皮をなめすタンニングの溶剤となったのである。

200年前であるのなら 人が何十人もはいりそうな大きな樽に皮を漬け込んでそこに人がずっと作業していたものだ。 最初の皮は毛や脂がついているからそれをはぎ取る作業員も何人もいた。
タンニング工程を何回も経て 今度は 皮を延ばす作業に入る。 あまりにも延ばせばとても効率がいい大きな皮を得られるが今度は強度に問題が来る。微妙な匙加減でこの根気よく作業が続く。
そう やがて 皮は 革になっていくのだ

名門タンナーは 名門ブランドに革を卸す。

イギリスの名門靴がノーサンプトンに集中したのも当然の定めだ。

クロケット&ジョーンズ
チャーチもいいが、なんとなく道をそれるのが好みで英国靴といえばクロケットを履く。

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好む理由は 230年以上前からの歴史がありながらOEMなど表に名前を出さずひたすらジョージクレバリーなどの超一流靴ブランドの製造を行ってきたことが決め手だった。
クロケットの名前はそう1990年以降の近年 、ただしあまりにも高品質であるため上市場して即ロイヤルワラントを獲得している。 そんな気骨なモノづくりが気に入っている。
スケアトゥのローファーやウィングチップのブーツなどを購入したのを覚えている。
「 タンナーを知っているか? 」ダメ元で訊いてみると タンナーは今は本当に大学の研究室に存在するぐらいでない。ただ ・・・ タスティングというブランドはタンナーを兼ねながらブランドとしてやっているよ

タスティングに向かった。

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山積みされた なめし革の数数。 タスティングの印象はそれだった。
ぐるぐる巻きに無造作に積みあがった革からは、まちがいなくタンニングされた香りが強くかおる。

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「 一番いい革をもっているから、 カバンを作った それだけの話だ 」
タスティングの初老の店員は顎髭を触りながら そう胸を張った。

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若い職人は無言で縫い上げていく。こうやって伝統を今から作っていく。
まじまじと伝統も歴史も知らないような若者が担っていく姿を見つめた。

外に出ればもう 夕方だった。 タスティングのワゴンが到着する。納品して帰ってきたようだ。

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あまり食事は美味しくないという知人のすすめでBARに転がり込む。
まだ明るい。

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思っていた以上のBARだった・・・オープン前に着いてしまい
「 どうだ 入るか? 」とマネージャーに言われるがままに

壮観の店内で思わず 写真を撮る。

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15分もしないうちに いつのまにやら常連含めて 店内はにぎわった。
隣に座った3人組から 
「 日本から何しに来たんだ 」とからかわれ
「 革の街を訪ねてきたんだ 」と伝えると 一気に笑い顔が神妙な顔で
「 だったら 明日 大学の研究室に来なさい なめしの工程を見せよう 」と
ノーサンプトンの夜は長かった。