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誕生日だった。
12月3日 
ぼくにとっての価値観と母のそれに対する軽視のギャップは冬の寒暖差よりも大きかった。
何でもいつでも買ってくれる母だが、誕生日に特に何かするという考えは毛頭ない。
その日もそうだった。 ただワイドショーやNHKのニュースは名古屋の女子大生の誘拐事件をおびただしい枠を取って報道していた。
最高気温16.3度
最低気温8.6度


自分の脳内には中年の男性がその女子大生をトランクに積んで走っている映像がはっきりと感じた。
女性の息は感じられない。発泡スチロールのようなものがみえる。
それを母に伝えた。
とんだ誕生日の事件であった。

ボクが、ぼんやり 
「 そうだね ふく子先生なら もうわかっているでしょう 」
とつぶやくと母が、
「 そりゃそうだよね 無事だといいけどね 」と母 
その手で黒電話よろしく早速長谷川先生に電話していた。

まあ ふく子先生は当時から日本一の霊能者とワイドショーでも引っ張りだこだったわけで まあ長谷川先生はマネージャー兼運転手。 なんでもマネージャーを通してというならわしだった。

電話を切ると 母が
「 あんた なになんで知っていたの? ニュースでやっていた? 先生もおんなじこと言っているけど どういうこと? 」
軽く問い詰められたけど知らんぷり。 誕生日を特別にしない母にいつも以上に抵抗していた。

12月のクリスマスになっても事件はいっこうに解決していなかった。
報道合戦は一層強まっていた。