ホスピタルと云えば病院だと思っていたが
カンタベリー大聖堂の街では違う。
以前、この街を訪れたとき驚いた。

簡単に言えばこうだ。少々長い。(笑)
ヘンリー2世の統治の時代。1170年代のころだ。
彼が任命したトマス・ベケット司祭。もとは親友関係であったが教会の権利を守るため断固として国王の要望を退け対立関係にあったが、 結果的に国王の騎士たちにこの大聖堂にて暗殺される。
訃報を知った国王は、墓前に跪いて謝罪した。

それから教会では不思議なことが相次いだ。不治の病が治るという人たちがあふれた。教会の外にはヨーロッパ中からベケットの奇跡にあやかりたい人々で行列を成した。

そんな街には、ホスピタルができた。
ホスピタルと言えばホスピタリティーとして
無料でベッドと食事を提供する宿泊施設の意味である。 
実は今でも存在している。


ロンドンからかなり南に下った海岸近くの田舎町。
カンタベリーの街に住む人たちは胸を張る。 「こんないい街は無い。大聖堂があるからね」と

大聖堂を覗いたとき 感度の高いひとならその癒す力に驚くだろう。

そして大聖堂を抜けると そこにあるハーブガーデンを見てほしい。

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元々は 本当に大聖堂に集まる人々の病気を治すために栽培してたハーブ園があったのがはじまりだ。
いまは訪れる人たちの心を癒すために再現している。
その庭師はこう答える。 「 最高の仕事さ 」と

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彼を見習う若い庭師も育っている。
「 庭いじりが子供のころから好きだった。庭をさわってお金がもらえる。最高だよ。 都会のロンドンに住みたくないかって? 全然さ。一生ここで庭を学んで暮らしたいと思っている。 まだまだ学ぶことが山ほどある。 だって僕が住んでいるところ知っているか? 大聖堂の敷地に住んでいるんだよ。最高だろう! 」 見習いの少年は屈託のない笑を浮かべて答える。

大聖堂には、たくさんのボランティアが活動している。彼ら彼女らのガイドには驚かされた。
給金を貰わないボランティアが、給金を貰うプロフェショナル以上の仕事をしているからだ。

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第二次世界大戦で焼夷弾から大聖堂を守るために、毎日毎日 ボランティアの市民が大聖堂の屋根に上ってバケツで水をくべて砂を撒いて火の粉を払ったという。
訪れた人々は 皆口を揃えて「 カンタベリー大聖堂のボランティアは世界一 」と感慨する。

ホスピタリティーの精神は、カンタベリー大聖堂があるから世界一ではないと司祭は静かに述べる。
大聖堂はきっかけに過ぎません、誰の心にも大聖堂よりも大きなおもてなしの心はあるのだからと優しい目で仰られた。

病院ホスピタルに努める医療職者は、この本来の語源の本質を忘れてはならないとも感じた瞬間

目の前のハーブガーデンに徹せよ、
慶びを感じよ
井の中の蛙を恥じるな 
井の中に学ぶことは無限だ
知はただただ深い
論じず、心をもてなせ