■アートバブル終焉■

米芸術家アンディ・ウォーホルもジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長には太刀打ちできない。高額絵画は金利上昇の影響を受けやすく、経験豊かな投資家でさえ予想できなかったほどであることが明らかになってきた。最高価格帯の美術品市場のバブルがはじけた。アート市場調査会社アートタクティックのデータによると、1000万ドル(約14億6900万円)超の絵画のオークション販売は2024年に44%減少し、25年も低迷が続く。市場の変化はニューヨークのサザビーズが5月に行ったオークションで明らかだった。希望価格7000万ドルのアルベルト・ジャコメッティの彫刻に入札が1件もなく、出品取り消しを余儀なくされた。



このような動向は、富裕層の投資戦略に大きな転換が起きていることを示している。かつてはインフレヘッジやステータスの象徴として注目された高額アートだが、金利上昇による流動性の低下や、他の資産クラス――特に債券や高利回りの預金商品――との相対的な魅力低下によって、リスクとリターンの見直しを迫られている。

一方で、500万ドル未満の中価格帯アートや新進気鋭のアーティストの作品には、一定の関心が残っており、富裕層の一部は収益性よりも個人的な趣味・文化的価値を重視する「コレクター」志向へとシフトしている兆しも見える。だが全体としては、「アートは資産」とする発想に冷水が浴びせられた格好だ。

専門家の間では、金利が安定するまでアート市場の本格的回復は難しいとの見方が広がっており、投資対象としてのアートの位置づけは、今後大きな再定義を迫られるだろう。
ロスコ、ジャコメッティ、バスキア、ビカソなど名だたるバブルアートが半値どころか三分の一未満でも買い手がつかない事態も想定されている。ある意味、裏を返せばCollectionしたい人に適正価格で入手出来る可能性も出てきた。